顧客ニーズの上手なつかみ方

2014-05-11

※2010年8月4日に中野区HPに掲載された記事です。

「不」の解消でヒット商品を創り出そう

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 長期にわたり成長している企業は、様々に変化する顧客のニーズ(欲求)を適格に捉え商品化しています。逆に言えば変化する顧客ニーズを捉えることができない企業は継続できないといっても過言ではありません。しかし、この『顧客ニーズ』をつかみ商品化することは簡単なように見えて大変難しい事も事実です。沢山の商品やサービスが毎年開発されていますが、この中でヒットし、永く続いて顧客の愛顧を受け続けている商品やサービスは驚くほど少ないことを見ても明らかです。そこで今回は企業にとっての永遠の課題で有る『顧客ニーズ』をつかむヒントを考えて見ました。

 1.「不」の解消が『顧客ニーズ』をつかむポイント

 『顧客ニーズ』には大きく分けて質的に二つの種類が存在します。
 一つは「快楽の追求」です。“美味しい物を食べたい”、”楽しいことをしたい” などが主なニーズです。他の一つは「苦痛の解消」です。簡単に表現すれば、”困っていることを何とか解決したい”がニーズです。
 そしてこの二つのニーズ(欲求)ですが、前者の「快楽の追求」よりも後者の「苦痛の解消」が数倍強いニーズで、景気の良し悪しに関係なく生じるニーズと言えます。従って、企業としては自社のターゲット顧客が“困っていることは何であるか”を探すことが新商品や新サービスを生みだす大切な活動といえましょう。
 困っていることをもう少し分類してみると、次のような「不」の解消と考えられます。つまり、「不安の解消」「「不便の解消」「不満の解消」「不○の解消」などまだまだ沢山の「不」が考えられます。

2.「不」を解消して『顧客ニーズ』をつかんだ事例

 それではこの「不」の解消に成功した事例を見ることにしましょう。

(1)「不安の解消」
 もっとも大きな成功となった商品・サービスは保険です。生命保険は“今一家の柱を失ったらどうやって生きていくの”という大きな不安を解消しました。流行のサプリメントは健康に対する不安を解消してビッグヒットとなりました。心の不安を解消した大人のおむつ、風水や占いも同様です。株や先物商品の値下がりリスクに対応した各種オプション商品もやや専門的商品となりますが投資家の「不安の解消」を実現する為に考えられました。世の中には、まだまだ沢山の「不安」が有ると考えられます。団塊の世代を中心とした「老後の不安」を解消することが出来れば大きなニーズ開発が可能となりましょう。

(2)「不便の解消」
 コンビニエンスストアや宅急便は説明するまでも無く「不便の解消」に成功し、ライフスタイルの変化を起こすまでに大きく需要創造を行った事例です。この不便の解消はニーズ開発の基本といえましょう。

(3)「不満の解消」
 背丈の短いバラを使用し、ヒット商品のバラのブーケが世に出たきっかけは、実はこの「不満の解消」がヒントになっています。花の生産業界では背丈の短い花は正規品として取引されず、ほとんどが廃棄されていました。“せっかく手塩に掛けて育てた花も泣く泣く廃棄しなければならない”といった花の生産農家の不満を解消し、ブーケとして商品化する事により、安い仕入れ価格では有りますが取引の対象商品となりました。
 一方ではリーズナブルな価格で本来は高価なバラを気軽に購入してもらえるようになり、ヒット商品になりました。他にも、観光旅館・ホテルの”稼働率がなかなか上がらない”という不満を解消した広告代理店のビジネスモデルなど、実はこの業者の不満を解決することにより成功した事例は意外と多いのです。
 

3.お客様の「困りごと」を考える事が大切

 自社の成長を考える時、顧客の「困り事は何であるか」を考えることが、意外と自社の成長のヒントになると思います。また、自社のクレームはこの「困り事」を探る貴重な情報です。言い換えればクレームは商品やサービス開発の宝庫と言っても過言で有りません。様々な「不」を解消するよう、自社顧客の困り事をどんどん見つけ、ヒット商品・サービスを生み出してください。

(中野区中小企業診断士会 若林 敏郎)
 

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