ヤマト運輸 羽田クロノゲート 見学会

2017-11-21

NPO法人中野中小企業診断士会主催「ヤマト運輸 羽田クロノゲート見学会」が、11月4日(土)に実施されました。

1.見学会の概要

今回見学に行きました、ヤマト運輸のハブ拠点である巨大物流センター「クロノゲート」は、2013年に竣工し既に4年が経過しておりますが、現在でも予約がすぐに埋まるほどの人気施設です。施設名称は、ギリシャ神話における時間の神クロノスと、日本と国外とのゲートとなることから、この二つを合わせた造語として「羽田クロノゲート」と名付けられたとのことです。当見学会は、ヤマトグループの担当者が施設内をご案内していただき、ヤマトグループの歴史や各施設の説明をいただけました。そのため、当施設がどのような意図をもって作られたのか、また、施設のベルトコンベアの特長も理解が深まったものと思われました。

2.クロノゲートの特徴
(1)立地
クロノゲートは陸、海、空の全ての輸送手段にアクセス可能な立地。陸は、トラック輸送に適した高速道路へのアクセスだけでなく、JR貨物へのアクセスも容易であります。海は、東京港や横浜港からも近く、また空は羽田空港からも近いといった恵まれた立地環境となっています。
(2)付加価値
物流を、価値を生み出すものに進化させるバリュー・ネットワーキング構想により、物流に正確に届ける仕組みと洗浄や印刷、メンテナンスなど多様な付加価値機能を持たせた施設です。

3.見学内容 
まず、左の見学者ホールでヤマトグループの歴史を振り返りました。1976年日本で最初に宅配便を開発した企業であること、その後もスキー宅急便、ゴルフ宅急便、クール宅急便と次々と宅急便メニューを増やしていった着眼点などの説明を受けました。また、上記2で記載いたしましたクロノゲートの戦略的特長、すなわち立地と付加価値についてその意図の説明をうけました。

左の見学者コリドーで実際に荷物が目の前を流れていく様子を見学しました。ベルトコンベアは365日、24時間稼動しており、そのスピードや送り先への仕分けの正確さには驚かされました。このベルトコンベア(クロスベルトソータ)は、「セル」と呼ばれる一枚板が何枚も繋がって大きなベルトになっています。一枚のセルに対して1つの荷物が乗る仕組みになっていて、フル稼働すると1時間で48,000個の荷物が仕分けられます。このベルトコンベアは1,366枚のセルで構成され、合計すると1,070メートルに相当します。

また、エレベーターを模した映像を通じて、上層階で行われている以下のような付加価値機能の取り組みについて説明を受けました。
(1)修理、メンテナンス、組み立て
生活家電の修理受付、修理、パーツ保管、ロジスティクス機能の集約により、煩雑な業務の一元化、さらに修理品の回収から返却までのリードタイムの短縮に可能にさせました。また、精密機器等、スピードが求められるビジネス機器のパーツ発送、メンテナンス、修理等を仕分け施設内で完結することで、拠点集約・受注時間の延長が可能になりサービス向上につながりました。
(2)医療
病院で使用する医療用器械を洗浄・メンテナンスする設備と、在庫を保管する場所も設置することで、リードタイムの短縮と流通在庫の圧縮が可能になりました。
(3)通関機能
海外から羽田空港あるいは成田空港に到着する商品を外国貨物のまま運び入れ、スムーズに輸入通関を実施。当施設内で輸出通関を行うことで、空港や港までのアクセスが良くなり、スピード出荷が可能となりました。
(4)ホームコンビニエンス機能
お部屋の清掃・整理等のサービスを行い「ご家庭内の困りごとの解消」に貢献します。住宅用設備の施工からアフターメンテナンスまでを、メーカー様に代わってワンストップで提供します。単身赴任のお客様等を対象とした、家具家電のレンタルを行います。返却物を洗浄・動作確認し、保管・再出荷します。
上記以外にも、ダンボールの開発研究なども行われていることの説明をうけました。
このような様々な付加価値は、在庫圧縮やリードタイムの短縮化、物流機能の範囲拡大を意図したものと思われます。

左は集中管理室です。集中管理室に入れるのは、一部の社員だけ。さらに入室には静脈認証が必要で、外側からもすりガラスで見えません。見学会では、このすりガラスの曇りを解除してもらい、外側から特別に室内の様子を見ることができます。コンピューター室にはたくさんのモニターが設置されており、全自動のベルトコンベアが正常に動いているか、荷物が落ちたりしていないかを常にチェックしています。また、集中管理室では、トラックの誘導も行っています。羽田クロノゲートの物流棟には、最大で110台のヤマトトラックが停車でき、管理室から適切な場所へとトラックを誘導します。

最後は左の展示ホールで、模擬ピッキングを行い、お土産をいただいて終了です。

上記クロノゲートは現時点でも、施設全体の実質無人化が可能なように思われました。ベルトコンベアに載せる前のピッキングは手作業で行っているとのことでしたが、一部ロボットも導入されているとのことで、実際雇用の観点から緩やかなロボット化を進めることにより雇用とのバランスを取っているように思われました。
将来、AIにおける自動運転が可能となり、荷物の配達もロボット化された場合ヤマト運輸におけるトラック輸送を担う従業員数は激減するでしょう。(エストニアで開発の「ピザ宅配ロボ」 がロンドンやベルリンでも走行しています。)これは、運輸業界だけの問題ではありません。様々な職業が人口知能に代替されたとき、どのように富を再配分するかが将来の大きな課題となるものと思われました。

終了後、羽田沖で取れたアナゴ天丼が有名な店で舌鼓し三々五々お開きとなりました

研修部 堀川 一

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