お店のファンをつくる顧客とのコミュニケーション
※ 2010年8月4日に中野区HPに掲載され
た記事です。
A店の事例に見る失敗と成功
店舗は顧客のために存在するというお客様主権の考え方は、異論のないところです。頭では分かっていることなのですが、実践することは意外と難しいことなのです。
顧客のニーズに対応していくこと、すなわち市場対応が小売店には不可欠であり、その手段として店舗より働きかけるコミュニケーションが見直されています。
このコミュニケーションのあり方をアメリカの心理学者が唱えた「ジョハリの窓」を参考に具体的に掘り下げてみます。
食料品全般を扱うA店はここ数年売上高の減少傾向に歯止めがかかりません。以前は当店で買い物をしてくれた固定客さえも、最近できた大型店に流れてしまったようです。
そこで、最近は対抗意識から「特売」を毎月実施していますが、顧客増につながる結果も得られていません。小規模なお店が価格競争しても勝てるはずがないのです。
そこで、上図の「窓」を「情報」に、「自分」を「自店」、「他人」を「顧客」に置き換えて考えてみました。
A店の「特売」は“この商品以外、安い商品は当店にはありません!”と意思表示していることになり、それよりも“当店で買われるのが一番お得ですよ!”とアピールすべきなのです。
具体的には、「最も楽しい情報がある」「何よりも使用してお得」「何といっても安心」「品質は間違いなし」「サービスは一番」「話題性がある」というような情報を積極的にPOP広告、商品説明をすべきです。店主だけが分っていても顧客には伝わらないのです。店主の考え方に共感してこそ、真のファンづくりが可能となり“歩く広告塔”となってくれるのです。
下図に表示した通り「開放された情報」の面積を拡大する努力こそ大切なのですが、併せて顧客の希望や要求に耳を傾ける情報収集に心がけ、「気付いていない情報」の面積を縮小させること、同時に当店の特徴やこだわりを積極的にPRし「隠された情報」の面積も減らすことが目的となります。
A店では、効果なき特売をやめて店主のこだわりを発信するように改善しました。店主自慢の“自然志向、健康志向”の商品揃えに近隣の主婦層の支持が高まったことは言うまでもありません。自店と顧客の情報の共有化がいかに大切であるかを示す事例です。
(中野区中小企業診断士会 野村 潔)