創意工夫がお店を変える(お客様の声で売上アップ)

2012-05-27

※2010年8月4日に中野区HPに掲載された記事です。

創意工夫がお店を変える(お客様の声で売上アップ)

イラスト
都内にあるK食料品店は、おにぎりやサンドイッチなどを扱うテイクアウトのお店。しかしコンビニや、コーヒーチェーン店の進出により、売上の減少を余儀なくされ、仕入れて売るやり方では、利益率も少なく廃業を視野に入れる日が続いていました。
奥さんの実家(九州)が食材の卸と弁当等の製造販売をしていたので、相談をしたところ、おにぎり専門の製造販売を推奨されたそうです。どうすべきか相談を受けた筆者は、「これからは、商品を仕入れて売るだけでは、大型店やチェーン店とは勝負にならないが、商品に一工夫加えられる製造販売システムなら、勝ち目はある」と激励しました。
食材等の支援を実家に約束してもらい、看板は「おむすびのK店」と書き上げ、手作りと健康、美味を売り言葉に、手作りのポスターを張り、店内の模様替えにも細心の注意をして再スタートしたのです。
ご夫妻は朝の4時から製造に励み、メニューも日替わりものを用意しました。コックさんスタイルでの顧客対応が受け、昼時には大忙しの繁盛店に生まれ変わりました。

多摩地区にある日本そば屋H店のお話。通行量の少ない広い道路に面したH店の店主は、職人気質のそば打ち名人といった「そば」一筋の人。味は天下一品、それなりに繁盛していました。ところが、3~4年前に大型チェーンの日本料理店と中華料理店が相次いで至近距離にオープンし、売り上げが減少しはじめました。
筆者は、お店で酒飲み垂涎(すいぜん)の的の一品料理を前に、元気がないご主人と話をしながら、メニューの見直しを勧めました。職人気質のご主人には、そば以外に手をつけるのは難しい話題であったと思います。しかし、新しい取り組みについて真剣に考える様子がうかがえました。
ある日、食事によったところ、「うどん」がメニューに加えられていました。数人で来店したお客様の「うどんはないのね」とささやく声がヒントになり、ふんぎりをつけるきっかけになったそうです。関東のそば職人としての誇りを考えれば、「うどん」に手をつけるには並々ならぬ決意があったはずです。しかし、思いきってお客様の声を取り入れたことで、廃業の危機は回避できました。

以上の2店からいえることは、移り変わりの早い今日、創意工夫をして自店の商品を見直すことの大切さです。つまり、仕入れて単に売ることから、一工夫加えて販売すること。自店の「こだわり」は大切にしながら、顧客のささやきというシグナルを見逃さないことが、売上アップのヒントといえるでしょう。

(中野区中小企業診断士会 新谷 安良)

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