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商売の基本をコツコツと
日々商売の原点を振り返る大切さを考える
今回は参考事例を離れて、経営コンサルタントの視点から「商売の基本」について問いかけをしました。以下を参考に、改めて「商売の基本原則」を振り返ってみて下さい。
1.商売の原点とはなにか
株式会社セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長は、商売の原点について次のように言っています。
「商売の基本原則は、(1)品揃え(2)鮮度管理(3)クリンリネス(清潔)(4)フレンドリーサービスの4つである。この基本的なことを毎日毎日続けることである。
特別高度な技量がなくてもやれるこの基本をおろそかにしていては、もっと難しいことなどできる訳がない。商売は派手な仕事ではなく、地味なことをコツコツとやることが大切なのである。」
この言葉は、物販のみならず飲食業やサービス業などについても当てはまります。お客様が望んでいる商品やサービスの品揃えに工夫を凝らし、最新のものを提供し、常に清潔な店舗にして、心のこもったサービスを心がけることは、全ての業種に共通することです。
2.毎日努力していますか
問題はこの商売の基本原則を毎日実行するように努力しているかどうかです。私は永年化学会社に勤務していました。当時は組織で仕事をしていましたので、上司からは難しい仕事を与えられ、期限に迫られ、叱られながら四苦八苦していました。早く組織から離れて独立し、自分のペースで仕事がしたいものだと思っていました。
しかし、組織で仕事をすることで、上下・左右からチェック機能が働き、仕事が順調に進むのです。経営コンサルタントとして一人で仕事をするようになって、初めてこの「組織の力」に気がつきました。
私自身そうなのですが、商店などの小さな会社では注意や忠告をしてくれる人が社内にはいません。したがって、毎日が何となく平凡に過ぎてしまいがちです。このような状態で5年、10年が経っていくと思うと怖い気がします。
要は、社長や店長である責任者が心して毎日、商売について真剣に考え、行動するように努力することが大切なのではないでしょうか。
以前に取り上げたO鰻店の事例も参考にして下さい。
(中野区中小企業診断士会 榊原貞夫)
フランチャイズチェーン加盟で成功するポイント
フランチャイズシステムを上手に活用して事業を発展させるには
フランチャイズビジネスは、新規事業進出を図る企業、事業転換を模索する商店主、創業を目指すサラリーマン等にとって、魅力的なビジネスシステムです。日本にフランチャイズビジネスが導入されて40年余り、市場規模は順調に拡大してきました。しかし、フランチャイズビジネスに加盟すれば必ず成功するという訳ではなく、当然失敗することも少なくありません。ポイントを確認した上で2つの事例から成功要因を学びましょう。
まず、フランチャイズビジネス加盟で成功する最低限のポイントを考えて見ましょう。
1.フランチャイズビジネスの仕組みを理解すること
フランチャイズビジネスとは何かをしっかりと理解することが第一歩です。フランチャイズビジネスは、本部と加盟店で構成されます。本部と加盟店はフランチャイズ契約を結びます。本部は加盟店にフランチャイズパッケージを提供し、加盟店はその対価を支払います。フランチャイズパッケージには、本部の商標の使用、経営システム・ノウハウの提供、継続的な指導・援助が含まれます。加盟店が支払う対価には、加盟金やロイヤルティ等があります。まず、この仕組みを理解することです。
2.自分に合った本部を選ぶこと
本部選択は大変重要です。本部とは今後長く付き合っていくのですから、その経営理念に共鳴できる本部を選択することが必要です。また、事業への投資金額、業態の成長性、フランチャイズパッケージの内容等を慎重に検討することが不可欠です。本部責任者との面談、加盟店との面談等を通して、信頼の置ける本部を選択します。
3.経営は自己責任であることを認識すること
加盟店は独立した事業者です。本部の支援は受けますが、加盟店の経営は加盟店の責任です。本部に依存しすぎず、自ら経営努力する姿勢を貫くことが必要です。
それでは、2つの事例から成功のポイントを探してみましょう
(1)宅配ビジネスに進出したIT企業
A社は、インターネット関連事業を営む企業です。社会への貢献度の高い事業、将来性のある事業、収益の安定した事業への進出を考え、高齢者向け配食サービスのフランチャイズチェーンに加盟しました。加盟を決定したポイントは、高齢化社会への貢献という本部トップの経営理念への共鳴です。もう一点は、業界での当本部の位置づけです。業界ナンバー1という地位のメリットを享受できると判断したからです。A社は既に2店舗目を出店し、さらに店舗数を増やしていく計画です。
(2)業態転換した酒販店
B社は業務用の酒販店を経営していましたが、業界環境が厳しいおり、後継者の子息が入社したのを機に新規事業進出を模索していました。ある飲食店チェーンへの酒類納入をきっかけに、そのチェーンへの加盟を決意し1号店を出店しました。その後、新たなチェーンを検討し、リサイクルビジネスのフランチャイズチェーンに加盟しました。現在、3チェーン6店舗を展開しています。フランチャイズビジネスの売上の拡大に伴い、酒販店ビジネスから撤退し業態転換を成功させました。
これらの例から、「理念に共感できる本部への加盟」や「取引の実態が見える本部」に加盟していることが分かります。B社では、リスク分散のために複数の本部に加盟するような事もしています。経営は自己責任である事を認識しているからこそ、慎重に加盟を検討し、大胆に展開できるのです。
(中野区中小企業診断士会 田中一次)
競合店対策のツボ
ミニスーパーの競合店対策に学ぶ
食料品小売業の商圏は狭く、売場面積が100坪未満のミニスーパーの商圏は半径500メートル程度です。この商圏に競合店が出店した場合、死活問題になります。A店は地域密着型のミニスーパーとして頑張ってきました。ところが、商圏内に競合店が出店し業績が下降し始めたのです。そこで、以下に記したような対策を行なったところ、見事に業績が回復しました。A店の成功事例をもとに競合店対策を考えてみましょう。
対策1.生鮮三品の鮮度管理を徹底した
精肉、鮮魚、青果の生鮮三品はスーパーにとって大変重要な部門です。A店では、この三部門の品揃え政策の中で最重要課題を「鮮度」として重点的に管理を行ないました。特に葉もの野菜は見た目で鮮度がすぐ判ります。お刺身も生で食べるものですから鮮度が落ちたものはすぐ判ります。鮮度が落ちた商品を安く販売しても、顧客は安く買った事を忘れ悪印象だけが残るものです。鮮度が落ちる前に見切り販売し、鮮度が落ちた商品は絶対に販売しないようにする事が大切なのです。
対策2.レジ要員の教育を徹底した
スーパーは意外と思えるほど、レジ関連のクレームが多いのです。
「刺身の上に重い野菜をのせた」「つり銭を間違えた」「レジが込んでいてもダラダラしている」「レジが空いている時おしゃべりしている」等々。
そこで、A店では“レジはスーパーの顔である”事を徹底的に教育しました。通常、レジ要員はパート社員が多く、帰属意識も正社員に比べて高く有りません。経営者が自ら率先して顧客志向の経営を行なっていることもあり、見事に顧客志向が浸透しました。
対策3.新聞折り込みチラシの廃止
スーパーの広告宣伝費の多くは新聞折り込みチラシです。金曜日、土曜日は大手スーパーからミニスーパーまで沢山の新聞折り込みチラシが入りますが、特価による訴求がほとんどです。商圏範囲が広い駐車場を多く備えた大型スーパーであれば効果が有りますが、足もと商圏(せいぜい半径500メートルまで)を対象としたミニスーパーということもあり、A店では思い切って新聞折り込みチラシを廃止してみました。そして、新聞折り込みチラシの代わりに店内配布チラシに切り替え来店客に特売予告チラシを配布したのです。その結果、浮いた経費で思い切った価格訴求商品を提供する事が可能となりクチコミで来店客は増加してきました。新聞折り込みチラシを廃止することは勇気が要ることでしたが、意外と売上は落ちず、利益が増加したのです。
A店の事例から、「自店の主力商品に磨きをかけ」「スタッフの教育を徹底し」「慣例に囚われずにコストを削減した」という3つの要素が浮かび上がります。単にやれば良いという訳ではなく、自店の強みと弱みを明確に見極め、他店と差別化できる要因を探していく努力が大切なのです。
(中野区中小企業診断士会 若林敏郎)
「夢」を語る大切さ
創業計画書はいくつも作ろう
創業するに当たっては、自分の「夢」をしっかりとイメージして、周囲にアピールできることが大切です。その為にも創業計画書は、区の創業融資や国民生活金融公庫の融資に必要な所定の書式だけでなく、オリジナルの創業計画書をしっかりと作りこんで置くと良いでしょう。創業計画書は、「自分」「スタッフ」「スポンサー」の3者に向けてそれぞれ作成しておくことが理想です。それは、堅苦しい詳細なものだけである必要はなく、相手に「想い」が伝わることが大切です。2つの事例から創業計画書のあり方について考えてみましょう。
1.情報通信関連の業務で創業を目指すAさんの例
情報通信関連の業務で創業を目指すAさんは、IT関連企業でのキャリアをベースに所定の書式で創業計画書を作成しました。融資に必要となる信用保証協会の保証を受けるには不明確な点が多かったため、計画書の修正と補足資料の作成をするようアドバイスしましたが、全く準備がなされていませんでした。しかも、計画の説明を同席していた人物(共同経営者ではない人)が行なうのです。2時間以上の面談において、創業者本人は殆ど話をしませんでした。このような状況でしたので残念ながらAさんは融資を受けられませんでした。
この事例では、何が問題だったのでしょうか。じっくりとお話を伺うと、Aさんは大きな「夢」を持っています。ところが、生来の口下手が災いして、しっかりと説明をする事が出来なかったのです。創業に当たって融資を受けたり、協力者を募ったりする為には、創業者が自ら事業について「語る」事が不可欠です。従って、口下手なのであれば、紙の資料などをしっかりと準備して、数字や図解など「話す」以外の部分で補う必要があるのですが、完全な準備不足でした。
2.映像製作の業務で創業を目指すBさんの例
映像製作の業務で創業を目指すBさんは、広告代理店でのキャリアをベースに創業を計画しました。指定された創業計画書だけでなく、オリジナルの創業計画書、業務経歴書、予想損益計算書・予想貸借対照表、予想資金繰り表、などなど自分の「夢」や事業の成功可能性をアピールする資料を揃えられるだけ揃えて融資の斡旋を受けました。金融機関との面談についても、コンサルタントと事前にリハーサルをしておく入念さで、オリジナルの創業計画書を何回も書き直していたので、書類を見ずに説明ができました。満額の保証が受けられただけではなく、更に追加の保証枠まで提示され、円滑に融資を受けることが出来ました。
この事例では、何が鍵だったのでしょうか。最初にお話を伺った時点では、事業イメージも曖昧でした。ところが、何度も計画書を書き直し、補足資料を準備する中で「その事業を全く知らない人にも分かるように説明できる」ようになったのです。その結果、創業者自身で自信を持って「夢」を語る事ができ、将来の大きな可能性を示すことができました。
2つの例からも創業計画書は単なる形式的な書類では無いことが分かります。創業者の「夢」を実現する熱い想いを込めて作成しようと思えば、たかが数枚の書式でも、その裏側で用意する資料は膨大なものになるのです。融資を受けようとする前に何度も何度も創業計画書を書き直して、自分の中で成功のイメージを明確に描き出す事が大切なのです。
(中野区中小企業診断士会 鈴木 佳文)
“事業は人なり”業務経歴書を活かす
信用保証を受けるための重要ツール
創業を志す人は、選挙の三バン(さんばん)「ジバン(地盤)、カンバン(看板)、カバン(鞄:金)」と同様に三バンは成功には必要です。カバン(資金)は重要で中小企業の創業支援資金の制度があります。この制度では信用保証協会の信用保証が必要です。
この信用保証は(1)決算内容、(2)経営者の人物、(3)資金の使途、(4)返済能力などを考慮して決定されます。ここでは、(2)経営者(創業者)の人物像(看板)を知る上では欠かせない、業務経歴書の作り方についてお伝えしたいと思います。
1.最初に従来の履歴書(学歴・職歴)をつくる
従来の履歴書をつくり、自分自身のビジネス人としての生い立ち履歴を整理します。
2.履歴から業務経歴書に展開する
(1)最終学歴と学部・学科
(2)勤務先名、事業の内容、担当した業務内容とその期間
業務内容については、例えば「営業」の場合にはどのような商品を扱い、ルートセールス、個別訪問セールスなど具体的に記入します。
また、この期間で業績に貢献した実績や取得した技術・技能・業界知識などを併記します。(強み:セールスポイント)
(3)継続して同一勤務先の場合
人事異動・部署の移動による業務内容の変更内容を記入します。この間に昇格などの役職名も記入します。(地位による権限・能力の変化)
(4)勤務先が変わった場合
(2)と同様に勤務先名などを記入してまとめます。
(5)資格の活用
獲得した資格を明記します。特に創業事業と関連のある資格は強調します。
3.創業事業との結びつけ
(1)ジバン(地盤)を活かす
創業に際しては、その事業内容が創業者の業務経験と関連のある、いわゆる、土地勘の有無が成功への近道とも言えます。しかし、地盤沈下している業界からの脱出の、新規分野への事業展開であっても、培われた経験や知識などを活かすことが必要です。
(2)人脈と協力者(企業)・支援者の確認
創業以前に培われた、人脈や協力者(企業)・支援者が創業後の事業活動に活用可能か、また、継続できるか、再確認が大切です。また、新規得意先開拓の際の創業者自身のプロフィールの説明に活かせます。
(中野区中小企業診断士会 鈴木 勇吉)
優良企業に学ぶ成功経営の10エッセンス
優良企業経営者との面談経験から成功要因を探る
業績を着実に向上させて発展している中小企業には共通した成功の秘訣があります。優良企業の経営者の方々とお会いしてきた経験から、肌身で感じた10の特徴をピックアップしました。これらのポイントを参考にして、自社の経営を振り返って見ましょう。
1.徹底した顧客本位の経営姿勢
「お客様の要望に最大限応えること」を通じて事業発展していることです。どの経営者にも見られた顕著な特長です。重要なことは「徹底して実行し続ける」ということです。
2.独自の技術、商品・サービスをもっている
顧客から高い評価を得て成長している企業の多くは、他社(他店)ではマネできない技術、商品・サービスを持っています。「これだけは他に負けない」という強みをもっています。
3.人を大切にする
業績の良い中小企業を訪問すると、出会う社員がみんなイキイキとしています。この職場で働くことに生きがいを持っているのです。このような企業の経営者は社員を人間として大切にし、自己実現の達成、安心して働ける環境づくりを重視しています。
4.「社会の中の自社」という意識
発展する会社は顧客、地域、社会へのお役立ち精神、Win-Winのスタンスで社会貢献、地球環境を大切にする経営姿勢をもっています。
5.見えないところにも手を抜かない
例えば料理人であれば、食材や使用する水にいたるまで気を抜かない姿勢です。顧客の直接目に触れないところで誠心誠意の努力をしてこそ、提供する技術、商品・サービスを通じて真の顧客満足が得られるのです。
6.良いことはすぐ実行する
良いと判断したことはすぐに実行する「善は急げ」、早期着手の経営姿勢です。結果として「先んずれば人を制す」、他より一歩先を行く経営につながっています。
7.事業承継がしっかりされている
将来の事業展望を明るい方向で語れる経営者は、事業承継が明確になっています。特に中小企業にとって、後継者の有無は事業の明暗を分かちます。事業の先行きを見据え、早めに将来を託せる後継者を確保・育成しておくことは経営者としての重要な責務です。
8.失敗から学ばせる姿勢
高成長企業に見られる特長は、社員の新たな発想を積極的に採り入れて仕事を任せていることです。たとえ失敗しても「失敗から学ぶ」ことを大切に、そこから得たことを次の飛躍につなげています。失敗を責めない組織風土も大切です。
9.若い人材の育成に力を入れている
若手社員が活躍する職場は、事業成長に勢いがあります。近い将来の本格的な人材不足に備え、会社の財産としての若手社員を早期にOJT中心で教育しています。
10.誠実な仕事ぶり、品質へのこだわり
逆境にあっても強く生き延びる企業の特長は、どんな環境においても自社の経営方針の筋を通し、誠実な仕事ぶり、つまり質のよい仕事をしていることです。逆境の時にこそ、事業の真価が問われます。某建設工事会社は耐震強度偽装問題で多くの同業者が淘汰される中、長年にわたり品質にこだわりぬいた技術力があらためて評価され、業界全体がピンチの最中、受注が大幅に増加しました。経営において環境変化に対応した経営の見直しも必要ですが、揺るぎない経営姿勢を貫き、「ブレのない事業運営をすること」は大切なことです。
(中野区中小企業診断士会 豊岡来実)
顧客ニーズの上手なつかみ方
※2010年8月4日に中野区HPに掲載された記事です。
「不」の解消でヒット商品を創り出そう
長期にわたり成長している企業は、様々に変化する顧客のニーズ(欲求)を適格に捉え商品化しています。逆に言えば変化する顧客ニーズを捉えることができない企業は継続できないといっても過言ではありません。しかし、この『顧客ニーズ』をつかみ商品化することは簡単なように見えて大変難しい事も事実です。沢山の商品やサービスが毎年開発されていますが、この中でヒットし、永く続いて顧客の愛顧を受け続けている商品やサービスは驚くほど少ないことを見ても明らかです。そこで今回は企業にとっての永遠の課題で有る『顧客ニーズ』をつかむヒントを考えて見ました。
1.「不」の解消が『顧客ニーズ』をつかむポイント
『顧客ニーズ』には大きく分けて質的に二つの種類が存在します。
一つは「快楽の追求」です。“美味しい物を食べたい”、”楽しいことをしたい” などが主なニーズです。他の一つは「苦痛の解消」です。簡単に表現すれば、”困っていることを何とか解決したい”がニーズです。
そしてこの二つのニーズ(欲求)ですが、前者の「快楽の追求」よりも後者の「苦痛の解消」が数倍強いニーズで、景気の良し悪しに関係なく生じるニーズと言えます。従って、企業としては自社のターゲット顧客が“困っていることは何であるか”を探すことが新商品や新サービスを生みだす大切な活動といえましょう。
困っていることをもう少し分類してみると、次のような「不」の解消と考えられます。つまり、「不安の解消」「「不便の解消」「不満の解消」「不○の解消」などまだまだ沢山の「不」が考えられます。
2.「不」を解消して『顧客ニーズ』をつかんだ事例
それではこの「不」の解消に成功した事例を見ることにしましょう。
(1)「不安の解消」
もっとも大きな成功となった商品・サービスは保険です。生命保険は“今一家の柱を失ったらどうやって生きていくの”という大きな不安を解消しました。流行のサプリメントは健康に対する不安を解消してビッグヒットとなりました。心の不安を解消した大人のおむつ、風水や占いも同様です。株や先物商品の値下がりリスクに対応した各種オプション商品もやや専門的商品となりますが投資家の「不安の解消」を実現する為に考えられました。世の中には、まだまだ沢山の「不安」が有ると考えられます。団塊の世代を中心とした「老後の不安」を解消することが出来れば大きなニーズ開発が可能となりましょう。
(2)「不便の解消」
コンビニエンスストアや宅急便は説明するまでも無く「不便の解消」に成功し、ライフスタイルの変化を起こすまでに大きく需要創造を行った事例です。この不便の解消はニーズ開発の基本といえましょう。
(3)「不満の解消」
背丈の短いバラを使用し、ヒット商品のバラのブーケが世に出たきっかけは、実はこの「不満の解消」がヒントになっています。花の生産業界では背丈の短い花は正規品として取引されず、ほとんどが廃棄されていました。“せっかく手塩に掛けて育てた花も泣く泣く廃棄しなければならない”といった花の生産農家の不満を解消し、ブーケとして商品化する事により、安い仕入れ価格では有りますが取引の対象商品となりました。
一方ではリーズナブルな価格で本来は高価なバラを気軽に購入してもらえるようになり、ヒット商品になりました。他にも、観光旅館・ホテルの”稼働率がなかなか上がらない”という不満を解消した広告代理店のビジネスモデルなど、実はこの業者の不満を解決することにより成功した事例は意外と多いのです。
3.お客様の「困りごと」を考える事が大切
自社の成長を考える時、顧客の「困り事は何であるか」を考えることが、意外と自社の成長のヒントになると思います。また、自社のクレームはこの「困り事」を探る貴重な情報です。言い換えればクレームは商品やサービス開発の宝庫と言っても過言で有りません。様々な「不」を解消するよう、自社顧客の困り事をどんどん見つけ、ヒット商品・サービスを生み出してください。
(中野区中小企業診断士会 若林 敏郎)
口コミパワーが行列を作る
2010年8月4日に中野区HPに掲載された記事です。
本物のこだわりにお客様は反応する
物販店や飲食店などの実店舗は、お客さまにご来店いただいてはじめて商売が成り立ちます。最近は、インターネットを活用して実店舗の集客や売上に結びつける例が、数多く見られます。ここでは、自店のホームページはもたずに、宣伝広告費もほとんど使わないでインターネットによるクチコミで集客に成功した「行列のできるラーメン店」の例をご紹介します。
1.経験豊富な創業者
Mラーメン店は、中野区で指折りの繁盛商店街に半年ほど前に開店しました。店長のFさん(30代、男性)とパートナーのSさん(30代、男性)には、飲食業界での長い経験と実績があります。二人は、開店直前まで同じラーメン店チェーンに勤務していましたが、いずれは自分達のお店で理想のラーメン店を経営したいという夢をもっていました。そんなとき、中野区の商店街のなかに居抜きで格好な物件が見つかりました。二人で勤務していたチェーンの本部を退職し、新たに株式会社を設立して独立開業することにしました。
開業資金は、開業をめざして貯めてきた自己資金でじゅうぶん間に合いました。しかし、製麺機の購入には多少不足します。せっかく自分のお店をもつのですから、ぜひ自家製のおいしい麺をお出ししたいという「こだわり」があったのです。そこで、中野区の創業支援融資制度を利用して、製麺機の購入資金を手当てすることになりました。
2.宣伝広告費ゼロ― 「クチコミ・マーケティング」の威力
ご相談に対応して、堅実な創業計画書から成功を確信しました。一つだけ気になったことは、新規創業にもかかわらず初年度から宣伝広告費がほとんど計上されていないことです。その点をおたずねすると、「あえて宣伝しなくても、ファンの皆様が勝手にインターネットで宣伝してくれますので大丈夫です」ということでした。
開店後しばらくしてインターネットで調べてみると、おききしたとおり当店の記事が何と1万件以上も検索されます。当店のお客様が、自分のブログやホームページに、お店やメニューの紹介、食後の感想などを、地図や写真までつけてくわしく掲載しているのです。しかも、その内容は、第三者がグルメ情報として発信するものですから、自店のホームページを作って宣伝広告をする以上に効果と信頼感があります。いわゆる「クチコミ・マーケティング」の威力が、最大限に発揮されています。もちろん、このように紹介されるのもお店や本人に実力があってのことです。
3.成功の方程式
先日、昼食に立ち寄ったところ、まさに「行列のできるラーメン店」です。店内に設置した製麺機で当日使用する量だけ麺を打つので、売切れ次第閉店です。午後7時すぎまで営業している日は、めずらしいそうです。打ちたての麺は最高ですし、味もベーシックでおいしいラーメンです。
もうひとつ驚いたことは、お店に若いお客様が多いことです。この商店街にまちがいなく新しい流れを作り出していくお店になるでしょう。好調な業績に、2号店開店の計画もあるそうです。
当店の開業成功の要因をまとめると「創業者の豊富な業界経験とかがやかしい実績」「格好な居抜き物件の店舗により開業費を節減」「インターネットによるクチコミ・マーケティング」の3つに集約されます。つまり、知り尽くした業界で、口コミが広がるようなこだわりを持って、堅実な計画を立てて、創業したということです。華々しく広告で集客し、開店時にお客様が来ても、本物の商品やサービスがなければ逆にお客様は離れていきます。結局は、中核となる商品やサービスが本物の逸品であることが行列店の近道なのです。
(中野区中小企業診断士会 飯田 廣己)
商いの原点を問い直す
※2010年8月4日に中野区HPに掲載された記事です。
鰻屋の事例から「お客様第一主義」を考える
繁盛店を目指すにあたっては、「お客様第一主義」を抜きには考えられません。ところが、実際に繁盛しだすと、商売の基本である「お客様第一」の精神が忘れられてしまうことも起こります。今回は、私が実際に顧客として体験した事例をご紹介します。
1 8月の猛暑の中、30人の行列ができるO鰻店
8月の中旬、M市の知人から「鰻をご馳走するから出てこないか」との誘いがありました。連日の暑さに少々参っていた時でもあり、家内を連れておっとり刀で駆けつけたのは、某有名鰻屋の「O店」でした。
私ども夫婦は初めてだったのですが、行列ができるので有名な店とのこと。昼食をご一緒するので、私どもは開店11時30分の15分前に行ったところ、既に30人位が並んでいました。知人の奥様が猛暑の中を何と1時間前から並び、列の一番前を確保して下さっていたお蔭で一番乗りという気持ちの良い雰囲気のなかで入店できたのでした。
2 古風な店内と美味しい鰻
繁盛店になる要素として、雰囲気の良い「店舗」と優れた「商品」が求められます。店舗は、民家を改造した古風な雰囲気で、いかにも老舗の鰻屋という印象でした。店内はすぐに満杯になり、外には入りきれない人が5~6人行列をつくっていました。
しばらくすると注文を取りにきたのですが、知人の話では料理が出てくるのに30分はかかるとのこと。取り敢えずビールを飲みながら待ちました。しばらくして出てきた鰻の白焼きと鰻重は絶品。O店は、繁盛店に求められる2つの要素をクリアしていました。
3 店外の行列に注意を払わない店員
私達は約1時間半ほどいて店の玄関を出ましたが、まだ20人位の人が並んでいました。そのとき熱中症で倒れた人がいるから「救急車を呼んでくれ」との声が玄関受付に届いたのです。見ると50過ぎのご婦人が外廊下に横たわっており、他の行列客の通報で直ぐに救急車が来たのでした。お店では、この事態にも何ら反応を示すことなく業務を続けていました。
4 O店の問題点
ここで、O店の対応について考えてみましょう。
(1)猛暑の中、30人位が並んでいるにもかかわらず、開店前だからといって門を閉ざしたままでいる。誰のお客様と考えているのでしょうか。
(2)熱中症で倒れたご婦人は外廊下に横たわっていたのですが、お店の人は誰も来ず、いわんや涼しい室内に誘導して休んでもらうこともしていませんでした。
(3)このような事件が起きたにも拘わらず、その後も長い行列を放置していました。確かに趣のある店舗、絶品の商品で有名な店なのですが、ここまで来るとお店の接客姿勢に疑問を感じざるを得ません。商人の基本精神である「お客様第一主義」とはどういう事なのか改めて考える必要がありそうです。真にお客様の事を第一に考えるのであれば、いくらでも工夫は出来るはずです。O鰻店の事例を教訓として、もう一度原点を振り返ってみましょう。
(中野区中小企業診断士会 榊原貞夫)
従業員満足を得られてこそ利用者満足がある
※2010年8月4日に中野区HPに掲載された記事です。
窮地に至った「介護ビジネス」の経営再構築に向けて
A社は、都内の4拠点で「訪問介護事業」「居宅介護支援事業」を営む介護ビジネス企業であり、平成12年の介護保険法施行と同時に創業し業績も順調に伸ばしてきました。従業員20名、ヘルパー80名を擁し売上も2億円弱を計上しています。大手の事業所を尻目に利用者のクチコミや紹介で利用者の拡大も図れてきましたが、外部環境の脅威に晒され新たな経営課題が浮上してきました。そこで、次なる一手とはどのようなものなのでしょうか。
1.外部環境の脅威による収益減少と人材不足に直面
平成18年4月に5年振りの改正介護保険法が施行されました。介護報酬料の改正に伴い、介護保険対象者の減少、予防給付新設等による業界全体を揺さぶる介護報酬減、さらには大手介護業者の不祥事をも招いた事業者規制の強化による人件費の高騰など、いままでの「介護ビジネス収益モデル」は見直しの状況となりました。
ここ数年の景気回復による求人募集の高止まりがヘルパーの応募者の減少を招いています。労働条件の厳しさの割には賃金が低いという風評が大きく影響しているのです。現在でも社会的使命に燃えた応募者はいますが、市場の求人数には追いつかない状況です。
2.次なる一手は新規事業への展望と内部管理体制の強化
業界動向として在宅介護から施設介護へと関心が高まっている中、限られた資本では限度があるため、改正により生まれた新たなサービス体系である「地域密着型サービス」への進出を検討しています。具体的には「小規模多機能型居宅介護」ですが、投資額も考慮に入れ慎重に検討していく方針です。
併せて、利益の源泉となる運営経費の効率化、すなわち管理システムの構築が当面の重要課題です。労働集約的な運営の中にも従業員とヘルパー(パートの比重が高い)の連携や協働の体制づくりが今回の見直しの重要項目であり、目標達成には従業員、ヘルパーの協力は必須条件なのです。
3.従業員、ヘルパーの満足度を高める「場」を作る
給料体系の見直し、仕事のマニュアル化、システムへの理解等と経営側からスタッフへの要求は止まるところを知りませんが、従来からの社内報や一方的な情報提供では効果はあがりませんでした。
そこで、経営状況を開示し成果に対する報酬体系を明確にすることにしました。まずは事業所の所長クラスの経営会議、事業所ごとの従業員およびヘルパーとの懇談会を実施し、提案や不満内容の把握、問題案件の解決に対し積極的に場を設け取り掛かることにしました。今までも、インセンティブの実施や提案制度も実行してきましたが、逆効果となり廃止しています。ヘルパーのロールプレイ訓練や介護士資格への助成制度が好評であり、利用者へのサービスの品質維持や利用者の満足度の向上に役立つ結果が見えてきています。
4.顧客満足を生み出す真のコミュニケーション
情報の供与や共有は勿論大切ですが、従業員やパートを如何に参画させ、本人の持っている潜在的な創造性や革新性を引き出せるかが重要なのです。その参画した提案なり、改善を具体化しフィードバックすることにより従業員が満足した結果、組織パワーがあがるということです。
従業員やパートヘルパーの確保・育成がこの介護ビジネスの根幹である以上、人の側面が何よりも重要であり、現在の経営危機を乗り切る最重要課題と位置付けられると考えます。介護ビジネスに限らず、スタッフが「ここで働けて幸せ」と感じ、積極的に参画してお客様の為にサービスを提供していくとき、顧客満足を生み出す真のコミュニケーションが生まれるのです。
(中野区中小企業診断士会 野村 潔)